2011年06月28日

映画「ブラック・スワン」感想文



MOVIX清水での観賞です。

ニューヨークのバレエ団に所属するダンサーのニナ(ナタリー・ポートマン)だったが、正確なダンスをするものの感情表現が上手くないために大きな役を取ることができないでいた。彼女の母親のエリカ(バーバラ・ハーシー)は、彼女を産むために断念したバレリーナのスターへの道を彼女に託し、過保護ながらも娘のあらゆることに干渉してきたのもその一因かもしれなかった。そんな中、芸術監督のトーマス・ルロイ(ヴァンサン・カッセル)は、それまでの大看板だったベテランダンサーのベス(ウィノナ・ライダー)を降板させ、新人を抜擢し新しい構成で「白鳥の湖」の公演をすることを発表する。バレエ団の若いダンサー全てにチャンスが与えられたが、トーマスは新たに情熱的な踊りができるダンサーのリリー(ミラ・クニス)を呼び寄せる。ニナは彼女なりに自分をアピールするが、相変わらず情熱的な演技ができずにいた。ニナは軽い色仕掛けでトーマスに主役抜擢を懇願するのだが、そこで起きたある出来事をきっかけに彼女は「白鳥の湖」の主役である「白鳥の女王」の座を射止める。

バレエの名演「白鳥の湖」の公演を舞台とした、バレエダンサーの心のうちを描いたスリラー。監督さんは「レスラー」のダーレン・アロノフスキー。主演のバレリーナ役に「スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐」のナタリー・ポートマン。舞台監督役に「スパイ・バウンド」のヴァンサン・カッセル。ライバルのバレリーナ役に「マックス・ペイン」のミラ・クニス。

さてこの映画でナタリー・ポートマンはアカデミー賞の主演女優賞を射止めるわけですが、かなり迫真の演技といってよかったと思います。「レオン」の小さな女の子のイメージが払拭しきれない彼女にとって、それ以上のイメージを得たかもしれません。殻を抜けきれない主人公のイメージともかぶったかも知れませんね。そして女のいろんな情念が入り混じった主人公以外の女性キャラも、効果的に作品の構成に強い影響をもたらせていると思います。

反面ナタリーが強烈過ぎて、そのイメージしか残らないのも事実。作品のバランス的には少し偏っていた感じがします。またからりホラー的な描写も見られましたが、あまり必要性を感じない気がします。また作品イメージにはそぐわないかもしれませんが、もう少しバレエのシーンが欲しかった気がします。それから…なんだろうな、何か観終わってからの不完全燃焼感があるんですよね、何か分からないけど。ラストカットも私好みだったんですがね…。

こうでもしなければ人間は成長できないのでしょうかね?時間とお金のある方はご覧下さい。


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2011年06月25日

映画「マイ・バック・ページ」感想文



MOVIX清水での観賞です。

学生運動が激しさを増していた1960年代。東大出身の記者の沢田(妻夫木聡)は、学生運動やベトナム戦争といった時代の中で「何かしたい」と言う気持ちを持って記者になったのだが、会社組織の中で新聞系週刊誌の記者として、そういったところとは縁遠い取材をしていた。そんな中、同じ雑誌で学生運動を扱っていた記者の中平(古舘寛治)から東大全共闘のカリスマ唐谷(長塚圭史)の取材情報を受け同行する。そういった取材を続けていく中、中平に梅山(松山ケンイチ)という男が接触してきた。取材場所として自宅を提供した沢田は、取材後に中平に深入りしないよう釘をさされたにもかかわらず、梅谷の不思議な人間性に引き込まれていった。梅谷は仲間たちで「赤邦軍」を組織し行動に移す時を狙っていた。沢田は何度か梅谷に接触するうちに、彼の言葉に疑問を抱きつつも、スクープをモノにしたい気持ちと親近感が梅谷の行動を結果助けていった。そして「赤邦軍」は武器を手に入れるため自衛隊の駐屯地に侵入していく。

川本三郎がジャーナリスト時代の経験を記したノンフィクションを映画化したものです。監督さんは「天然コケッコー」の山下敦弘監督。主演の新聞記者役に「悪人」の妻夫木聡。学生運動のリーダー役に「GANTZ」の松山ケンイチ。雑誌の表紙を飾る女子高生モデル役に「BECK」の忽那汐里。リーダーを愛し学生運動に巻き込まれていく女性役に「落語物語」の石橋杏奈。

さてこういった時代をおぼろげながらに覚えている訳なのですが、後の連合赤軍の事件や、こういった運動にまつわる映画やドラマを見る限り、リアリティーを追究したものが多く、何故彼らがこういった方向に行ってしまったをいろんな視点で描いたものが多いです。しかし1976年生まれの山下監督は、そういった時代背景を考慮しながらも、心のそこで同じ思いを持った二人の青年の姿を第三者の視線で客観的に描いています。また主人公の役者さん二人も、その期待に見事に応えていると思います。

でもこの時代の若者にしては、妻夫木君も松ケンも「キレイ」過ぎるんだよね。雑誌記者とはいえ、会社に出てくるときはこの頃は七三分けとかが普通じゃないかなぁ…。松ケンも学生運動のリーダーにしては清潔っぽ過ぎるんだよね…。また女子高生モデル役の忽那汐里さん。観ていないので分からないけど「BECK」の時は結構良かったって評価なんだけど、今回の映画に関しては主人公の心の裏側を表現する重要な役なんだけど、何かインパクトに欠けた気がします。

日本が混乱したやや暗い時代を新しい切り口で見た一本だと思います。時間とお金のある方は是非ご覧下さい。


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2011年06月21日

映画「ザ・ホークス ハワード・ヒューズを売った男」感想文



藤枝シネ・プレーゴでの観賞です。

ニクソン政権時のアメリカ。自分の才能を自負する作家のクリフォード・アーヴィング(リチャード・ギア)は、出版社に企画を持ち込むも、大概はボツにされていた。この日も出版社側から提示された企画を受け入れ、契約金を当てにして車などを買うも、結局はその企画もボツになってしまう。彼の妻のエディス(マーシャ・ゲイ・ハーデン)と親友のディック(アルフレッド・モリナ)はそんな彼を慰める。冴えない作家として終わるつもりが無いクリフォードは、思いつきから大富豪ハワード・ヒューズのニセの回顧録を執筆することを思いつく。彼は偽のヒューズからの手紙を偽造して出版社を信用させた。ディックと共にヒューズの調査を始めるが、ウソとばれる心配をするディックにクリフォードは、ここ数年世間に、果ては会社の役員会にも姿を見せないハワード・ヒューズがこんなことで姿を見せるわけがないと強く意見する。クリフォードのハッタリと周囲の協力で調査は進んでいくが、他の出版社からヒューズの自伝が出版されるとの報道に、クリフォードの計画は破綻を見せてくる。そしてそれはアメリカの国家を巻き込んでいく騒動に発展していく。

1970年代にアメリカで実際に起きた詐欺事件を基に描く人間ドラマです。監督さんは「HACHI 約束の犬」のラッセ・ハルストレム監督。主演の作家役に同じく「HACHI 約束の犬」のリチャード・ギア。その親友役に「スパイダーマン2」のアルフレッド・モリナ。妻役に「ミスト」のマーシャ・ゲイ・ハーデン。

謎の多い大富豪ハワード・ヒューズの自伝を、ハッタリと舞い込んできた重要な情報を使って出版させようとし、結果罪に問われた作家の話です。実際にあった話らしいのですが、こんなコトをハッタリで通そうとする主人公に呆れます。話が個人的な浮気などの話から、国家規模の大スキャンダルまで飛び出し、果ては現実と妄想の世界が区別つかなくなるくらい、最終的に追い込まれる作家の役をリチャード・ギアが好演しています。とにかく姿を見せないハワード・ヒューズの力が後半になるほど増していく演出になっています。

しかし「真実の物語」と言いながらも、実際の話は薮の中と言った感じでしょう。ハワード・ヒューズの話はディカプリオが「アビエーター」という映画でもやっていましたが、得体の知れない部分もあります。これを「真実」としてインプットしてしまうのは危険でしょう。あと、どうでもいいことではあるんですが、リチャード・ギアの髪型がねぇ…(^_^;)

複雑な話をある程度分かりやすく仕上げているのは好感が持てます。時間とお金のある方はご覧下さい。


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2011年06月19日

映画「奇跡」感想文



シネプラザ・サントムーンでの観賞です。

関西で暮らしていた一家が両親の離婚で離れ離れになった。小学生の兄弟の兄の航一(前田航基)は、母親ののぞみ(大塚寧々)の鹿児島の実家で暮らしていた。一方父親の健次(オダギリジョー)に引き取られた弟の龍之介(前田旺志郎)は健次の故郷の福岡で暮らしていた。一家が離れ離れになって暮らすことを苦痛と感じる航一と、自分の友人や父親の友人と楽しく暮らしている龍之介に性格の差こそあるが、兄弟は互いを強く結びつけ合っていた。ある日航一は友人から、開業する九州新幹線の上りと下りの一番列車同士がすれ違う所を見ると奇跡が起きると言う話を聞かされる。航一の起こしたい奇跡は「家族4人が、もう一度一緒に暮らすこと」。鹿児島に住む航一とその友人、そして福岡に住む龍之介とその友人たちが「奇跡」を起こすために行動をはじめる。

2011年3月に全線開通を迎えた九州新幹線を題材に、心が離れてしまった家族のきずなを取り戻そうと奮闘する兄弟を中心に描いた話です。監督さんは「誰も知らないの是枝裕和監督。主演の兄弟役に少年漫才コンビ「まえだまえだ」の前田航基と前田旺志郎。兄弟の父親役に「東京タワー オカンとボクと、時々、オトン」のオダギリジョー。母親役に「HERO」の大塚寧々。

まずは芸人としての「まえだまえだ」よりも、役者としてさらに進化したこの兄弟に引き込まれていきます。すでに「演じる」ということを把握しているであろう兄は家族愛を求める少年を、普段から天然キャラの弟は楽天的な子供の姿を映し出しています。話として面白いなと感じたのは、登場してくる子供の男、子供の女、大人の男は夢らしい夢を持ち、大人の女は現実的なところです。しかし子供の男は比較的非現実的なことを言い(仮面ライダーになりたいとか)、子供の女は現実的な将来を夢見ます。大人の男は具現化できる夢を手に入れるために模索しまくる。こういった違いが垣間見られました。また是枝作品常連の役者さんを含め、役者がそのキャラクターに合ったポジションを的確に与えられているなと感じます。

しかしなぁ…、子供が旅行に出るために資金集めをするのだが、集め方がいかんだろ。自販機の下を漁るのは三遊亭小遊三師匠のネタだけでOKです。また鉄ヲタでもなさそうな子供が新幹線のすれ違う場所を「ある程度」にしても時刻表も見ずに特定できたのが何故なんだろなと、元鉄ヲタ少年のオジサンは思うのでした。

オッサン達が「♪あおいひかりの超特急~」と歌っていたのには思わず吹いてしまいました。良い映画だったと思います。時間のある方はご覧下さい。


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2011年06月18日

映画「アジャストメント」感想文



TOHOシネマズ名古屋ベイシティでの観賞です。

下院議員のデヴィッド(マット・デイモン)は上院議員に鞍替えするための選挙活動を行っていた。若さゆえに上院議員には不向きではないかと言う声を撥ね退け、若者たちの支持を集めていた。しかし支持者を集めたパーティーでの不祥事を機に支持率がどんどん下がり、選挙は敗色濃厚となる。敗北宣言をする前にトイレに入ったデヴィットは、男子トイレに隠れていたエリース(エミリー・ブラント)と出会う。エリースの優しく前向きな言葉にデヴィットは恋に落ちる。彼女の影響でシナリオと違う話となった敗北宣言も世間の注目を集めることとなった。選挙参謀の会社に就職したデヴィットは、出社する車内でエリースと再び出会う。連絡先を貰い浮かれ気分で出社したデヴィットの前に現れたのは、「アジャストメント・ビューロー(運命調整局)」と呼ばれる、人間の運命を司る人物たちだった。彼らに拘束されたデヴィットは、組織のことを口外しないことと、エリースに二度と会わないことを約束させられる。

「マイノリティ・リポート」などの原作者フィリップ・K・ディックの短編小説を映画化したものです。監督さんは「ボーン・アルティメイタム」などの脚本家ジョージ・ノルフィ。主演の政治家役に「ヒア アフター」のマット・デイモン。恋人のダンサー役に「プラダを着た悪魔」のエミリー・ブラント。運命調整局のメンバー役に「イーグル・アイ」のアンソニー・マッキーや「ワルキューレ」のテレンス・スタンプ。

さて運命と言うのが能動的なものか受動的なものかを、「運命調整局」という分かりやすい組織を使って問い掛けてきています。運命調整局は神とも呼べる人物がメンバーとなっているわけですが、この組織が「会社的」であり、そのメンバーも居眠りをしてミッションを失敗したりして非常に人間っぽく描かれています。また主人公の男女も意外と単純な性格でわかりやすく表現されています。あまり考えなくて良く、短くまとめられているのは非常に評価できます。

ただ予告編を見て、マット・デイモン主演と言うこともあり、アクション系を想像して観ると裏切られた感じがあります。恋愛映画として捉えたほうがすんなり入っていけると思います。また悪役もテレンス・スタンプみたいな強烈な役者さんを使っていますので、もっと迫力のある演出を期待したかったなと思います。それから主人公の男女二人の出会い、少ーし無理やりすぎるかな(^_^;)

個人的にはこの主人公の政治家さん、ジム・キャリーにやらせてみたらどうなるかな?なんて感じました。時間とお金のある方はご覧下さい。


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2011年06月16日

映画「手塚治虫のブッダ 赤い砂漠よ!美しく」感想文



シネマサンシャイン沼津での観賞です。

2500年前のインド。緑豊かなシャカ国にチャプラ(声:竹内順子,堺雅人)という奴隷の少年がいた。心優しい母親と共に暮らすチャプラだが、彼の失敗で母親が売られてしまう危機が訪れる。彼の失敗の原因を作った少年らと共に母親を救いに行き成功する。しかしそこに強大な隣国コーサラ国が攻め入ってくる。コーサラ国のブダイ将軍(声:玄田哲章)の殺害を図ったチャプラだが、その命を救った。それはコーサラ国で自分の地位をもっと高い位置に持っていくためのチャプラの野望の実現に向け、将軍を踏み台にするためだった。一方シャカ国では王子シッダールタ(声:折笠愛,吉岡秀隆)が誕生する。シッダールタは幼い頃より争いごとを嫌い、生命の誕生と死に興味を持ち、心を動かされていた。父王スッドーダナ(声:観世清和)はこうした世継ぎの性格を強くするため、戦闘術を強引に身に付けさせていた。そうした中、将軍となったチャプラ率いるコーサラ国軍が再びシャカ国に攻め入ってきた。

手塚治虫先生の代表作の一つ、仏教の開祖・シッダールタの生涯を描いたコミック「ブッダ」の初のアニメ映画化作品。3部作の第1部となる本作では、シッダールタの誕生からブッダとなる前の姿を描いています。声の出演には吉永小百合,堺雅人,吉岡秀隆ら俳優陣と、玄田哲章,水樹奈々などの声優さんたちが多数出演されています。

さて手塚先生の「ブッダ」をアニメ化したものですが、手塚治虫と言う人間が冷静に仏教開祖であるシッダールタの成り立ちを描いているため、宗教観がそんなに強くないところが評価されると思います。確かにシッダールタ誕生のエピソードには様々なスピリチュアルなエピソードが紹介されていますが、イエス・キリストや聖徳太子でもこういったエピソードがあるものなので、ここは受け止めていきます。そしてインド独特のカースト制度にも強く触れています。

しかし話の進行が急ぎすぎている傾向があって、人と人の心のつながりや、何故この人がそう考えたのかといった心の動きが今一つ観る側に伝わってこない感じがするんですね。また能楽の観世流宗家の観世清和さんが主人公の父親役をやっているわけですが、これがあんまりといったらあんまり。私の母親が謡をやっているので能楽師の方を悪く言うのは嫌なのですが、主人公の性格を形成していく上で非常に大事な役回りなのに…、作品から映画館の客席に引き戻されるような感覚になってしまうんですよね。

それでもお釈迦様を知るのには興味が出て、その先を知りたくなるようなつくりになっています。時間とお金のある方はご覧下さい。


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2011年06月14日

映画「トゥルー・グリット」感想文



シネプラザ・サントムーンでの観賞です。

酒場での揉め事に端を発し、父親を使用人のチェイニー(ジョシュ・ブローリン)に殺された14歳の少女マティ(ヘイリー・スタインフェルド)。彼女は家から離れた父親の殺された街でチェイニーの情報を集めた。彼は街を離れ、荒野の中の先住民居住区の中に身を隠しているとのことだった。持ち前の利発で強気な性格からむりやり資金をひねり出し、チェイニーを一緒に探してくれる保安官を探した。何人かの保安官が紹介されたが、その中で真の勇気をもつといわれるベテラン保安官のコグバーン(ジェフ・ブリッジス)雇った。しかし彼は粗雑な上に、悪党を容赦なく撃ち殺すといった一面も持ち合わせていた。当たり前の話だが、雇い主であるマティの言うことなどほとんど聞かなく、前途多難な旅になると思われたが、そこに同じくチェイニーを追うテキサスレンジャーのラビーフ(マット・デイモン)も加わる。三人はいがみ合いながらもチェイニーを探し荒野を進みつづける。

監督に「ノーカントリー」のジョエル・コーエン、イーサン・コーエン、製作総指揮にスティーヴン・スピルバーグという豪華タッグの西部劇です。主演の保安官役に「アイアンマン」のジェフ・ブリッジス。父親の敵討ちを企てる少女役に長編映画初出演のヘイリー・スタインフェルド。旅に合流するテキサスレンジャー役に「ボーン・アイデンティティー」のマット・デイモン。

さて本当に久しぶりに観る西部劇です。コーエン兄弟の作品は独特な雰囲気を醸し出すわけですが、今回の作品も「勇気ある追跡」をリメイクしつつも、無法地帯でありさらに自然の恐怖が潜んでおり、さらには美しい風景も見せる荒野を表現しています。また男臭い中に凛とした存在感を見せるヘイリー・スタインフェルドの姿は非常に光っています。

ただ素材がありがちな仇討ち物語のため、何かもう一品欲しいような欲求にかられるんですよね。俳優さんは超一流ですし、少女も新人サンながらなかなかよろしいのです。演出も悪くは無いのですがね…。ある種のスピード感なのか、対決の緊張感なのか?

話はシンプルなので考えなくて良い一本なのかもしれませんが、気を抜いて観ていると、コーエン兄弟の微妙な演出を見落としてしまうかもしれません。時間とお金のある方はご覧下さい。


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2011年06月11日

映画「ダンシング・チャップリン」感想文



静岡シネ・ギャラリーでの観賞です。

振付師ローラン・プティがチャップリン映画を観て、バレエダンサーであるルイジ・ボニーノをイメージして創られたバレエ「ダンシング・チャップリン」は1991年に初演された。映画監督・周防正行は、妻であるバレエダンサー草刈民代のダンサーとしての姿をフィルムに残すために、この「ダンシング・チャップリン」の映画化を進めはじめた。周防監督は作品の作者とも言えるローラン・プティのもとを訪れ作品の映画化に関するディスカッションをし、チャップリンに対するイメージを得るため、チャップリンの息子であるユージン・チャップリンのもとを訪れたりしていた。映画化が進むにあたり、東京の稽古場では草刈とルイジ・ボニーノを始めとしたそうそうたるメンバーが、舞台ではなく「映画」としてのバレエ作品に向けての稽古とディスカッションが進められていた。

「街の灯」「チャップリンの黄金狂時代」などチャールズ・チャップリン作品をフィーチャーしたバレエ作品「ダンシング・チャップリン」をテーマに、ドキュメンタリーとダンサーたちのパフォーマンスで表現した異色作。監督さんは「Shall We ダンス?」の周防正行監督。名バレエダンサーのルイジ・ボニーノや監督の夫人の草刈民代をはじめとした、バレエ界のそうそうたるメンバーが出演しています。

作品は製作にあたる周防監督の打ち合わせ風景や、ルイジ・ボニーノと草刈民代らのキツイ練習風景などが収められた第1章と、バレエ「ダンシング・チャップリン」を収めた第2章で構成されています。第1章の周防監督とローラン・プティの「作り手」としての戦いや、稽古場でのダンサー達の妥協を許さない練習風景が収められています。しかしやはり作品としての真髄は第2章にあります。これで引退するのかと思う草刈民世の動きと線の美しさも息を呑むのですが、ルイジ・ボニーノのとても60歳とは思えないダンスのキレと表現力は圧倒的です。またただの舞台をカメラで撮っただけでない、様々な角度から撮影された映像は、間違いなく「映画」であることを印象付けています。

バレエ入門書としての作品を目指したと周防監督は言っていますが、日本人にとってバレエのイメージである「白鳥の湖」や「くるみ割り人形」以外の作品を素材として使って、果たして入門書と言えるのかなという疑問は少々残ります。まぁ映画作品ですので、バレエと映画の要素を併せ持ったこの作品の選択は無理はないと思うのですがね。そして作品の肝でもある第2章。当然ながらセリフはありません。チャップリン映画の馴染みの音楽や、バッハのパイプオルガンを用いた音楽はあるのですが、それが裏目に出ている感も否めません。実際そばで観ている人は寝息を立てていましたからね(^_^;)

それでも世界トップレベルのダンサーの美しい姿は一見の価値ありです。時間とお金のある方は是非ご覧下さい。


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2011年06月09日

映画「津軽百年食堂」感想文



シネプラザ・サントムーンでの観賞です。

東京でバルーンアートをして生活の糧を得ていた大森陽一(藤森慎吾)は、結婚式でのバイトでカメラマンの筒井七海(福田沙紀)と知り合う。彼らは同じ青森県弘前市の出身であることが縁で一軒家をシェアすることとなった。陽一の実家は大森食堂と言う弘前では名の知れた津軽そばを食べさせる食堂を実家に持ち、七海は十年前に父親を亡くし、実家の写真館は廃業してしまった。大森食堂は明治の末期に初代の大森賢治(中田敦彦)が自家製麺と独自の出汁を使った津軽そばが評判の屋台を出していた。それから三代目の陽一の父の大森哲夫(伊武雅刀)と陽一は、食堂を存続に対して折り合いがあまりよくなく、疎遠となっていた。そんなある日、陽一のもとに哲夫が交通事故で入院したとの知らせが入る。

作家・森沢明夫の同名小説を原作に映画化したものです。監督さんは「ヒポクラテスたち」の大森一樹監督。主演の実家の食堂を守ろうとする青年役にお笑い芸人オリエンタルラジオの藤森慎吾。食堂を開いた初代の青年役に同じくオリラジの中田敦彦。女性カメラマンの役に「ヤッターマン」の福田沙紀。

代々続く食堂に愛着がありながらも無理して疎遠にしている主人公を、オリラジの藤森慎吾が「下手なり」に好演しています。最近「チャラ男」キャラが定着してきた彼ですが、底辺に流れるのはこちらかな、といった気がします。また東北人の粘り強さ、頑固さ、朴訥さがキャラクターの中に強く表現されています。また弘前城の桜がきれいですね。そして観た帰りに、津軽そばでなくてもそばが食べたくなる気持ちが掻き立てられます。

しかし作品全体で、構成のチグハグさが少し目立つ気がします。初代の明治末期のくだり、現代の食堂のくだり、そして女性カメラマンの実家のくだりが上手に整合性が取れていないんですね。話が上手く噛みあっていないように感じるんです。特に食堂の明治末期と現代は、何らかの整合性が見られないとおかしいのに、それが非常に見えづらいんですね。話そのものの素材の良さが感じるだけに非常に残念な気がします。

何か良くも悪くも大森監督らしさが出ている気がします。時間とお金のある方はご覧下さい。


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2011年06月04日

映画「岳 -ガク-」感想文



109シネマズ名古屋での観賞です。

山を愛し、世界の山を登ってきた島崎三歩(小栗旬)は北アルプスで山岳救助のボランティアをしていた。クレバスに落ちたり滑落したりした要救助者を多数救ってきたが、中には救助できない場合もあった。ある日横井ナオタ(小林海人)と言う少年が、父親がいなくなったと助けを求めてきた。救助に向かった三歩だが、彼の目の前で少年の父の横井修治(宇梶剛士)は命を落とす。一方、長野県警の山岳救助隊に新人として配属された椎名久美(長澤まさみ)は、勘違いから行った救助の現場で初めて三歩を見かける。三歩の登山の先輩で、山岳救助隊の隊長の野田正人(佐々木蔵之介)は新人の教育の一環として、久美と三歩を組ませて訓練を受けさせたり、救助の現場に向かったりした。そうやって三歩と関わっているうちに、三歩と言う人間と山岳救助のあり方に、久美は疑問を持ち始める。

ビッグコミックオリジナル連載中の石塚真一作の人気コミック「岳 みんなの山」を基に、山岳遭難救助をリアルに描いた山岳ドラマ。監督さんは「ヒート アイランド」の片山修監督。主演の高い技術を持つ山岳救助ボランティア役に「キサラギ」の小栗旬。新人山岳救助隊員に「世界の中心で、愛をさけぶ」の長澤まさみ。救助隊の隊長役に「20世紀少年」の佐々木蔵之介。

まずは実際に北アルプスでロケしただけの事があって、その壮大な風景は何物にも替え難いものがあります。山を描いた作品はたくさんあります。今ではCGでかなりのものが出来ると思いますが、実際の場所で撮影するスタンスは大切だなと感じます。また主演の小栗旬さんですが、個人的には島崎三歩という特異なキャラクターを原作のイメージをそんなに損なうことなく演じていたと思います。私も原作の「岳 みんなの山」を楽しみに読んでいますが、どちらかと言うとイタいキャラです。予告編で見るよりはずっと良かったというのが素直な感想です。

話のメインとなってくる多重遭難での父娘の救助の場面があるのですが、話をドラマチックにするためと言うのは分かるのですが、少々状況設定にちぐはぐな場面が出てくるのは気になります。また時々CGを使っているようなのですが、やはりロケの背景とはかなりの差があり、違和感は否めません。CGを使っている場面が少ないから相対的に目立ってしまうとは思うのですが…。

正直テレビなどでの宣伝的なものはかなり鼻につくのですが、映画そのものは良い出来だと思います。時間とお金のある方は是非ご覧下さい。


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2011年06月01日

映画「SOMEWHERE」感想文



MOVIX清水での観賞です。

ハリウッドスターのジョニー・マルコ(スティーヴン・ドーフ)はロサンゼルスのホテル暮らし。撮影の合間は酒を飲み、抱きたい女を抱く派手で自堕落な生活を送っていた。仕事と言えば、マネージャーから時々入る撮影の特殊効果の準備や取材などをこなす程度だった。ジョニーには別れた妻との間にクレオ(エル・ファニング)という11歳の娘がいた。クレオは元妻と一緒に生活していたが、元妻が都合の悪い時には習い事の送り迎えなどをしていた。ある時元妻から電話が入り、しばらく家を空けるのでクレオを預かって欲しいとのことだった。ジョニーは受賞のためイタリアに行かなければならず、クレオを連れイタリアへと向かう。

映画スターの家族のきずなや孤独をセンチメンタルに描いた人間ドラマです。監督さんは「マリー・アントワネット」のソフィア・コッポラ。主演の映画スター役に「ブレイド」のスティーヴン・ドーフ。その娘役に「ベンジャミン・バトン 数奇な人生」のエル・ファニング。

その派手さの割に内容がない映画スターが、娘との生活の中で自分を見つめなおす作りとなっています。基本的に日常を淡々と映像化しています。主人公が乗るフェラーリが、もう一つの主人公の姿として効果的に使われているのが印象的です。もう一つ強く印象に残ったのが娘役のエル・ファニング。彼女は女優ダコタ・ファニングの妹です。「ベンジャミンバトン…」の他に「シャーロットのおくりもの」などにも出演していますが、この映画の彼女の姿はかなり印象的です。

しかし日常を淡々と描くというこの映画のスタンスが、抑揚のない作品と捉えられても仕方ないと思います。実際そばにいた男の人はいびきかいて寝ていましたし…。また始まってからかなりの時間まで主人公の素性が良く分からないのも少々苛立ちを覚えます。セリフすらほとんど無かったですからね。なのでお姉さんのポールダンスのシーンをガン見してしまいました。

ラストカットを見てみんなどう思うのだろうな。私は「そう来たか!」と思いましたが…。時間とお金のある方はご覧下さい。


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Posted by 清水落語王国Web管理人 at 00:18Comments(0)映画